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CSA(地域支援型農業)

近年ニュースなどでよく耳にするCSA(地域支援型農業)地域住民と支えながら安定的な経営を目指せる新手法として注目を浴びています。

CSA(地域支援型農業)とは、「Community Supported Agriculture」の略称で、農家が消費者である地域住民と支え合いながら営農する新しい農業経営の手法で、近年注目されるようになりました。

消費者は、農家と契約を結び代金前払いで農産物を定期購入します。ポイントは、農家が抱える経営上のリスクを消費者が共有するという点です。

消費者は、天候や病害虫の多発などによる不作によって届く農産物の量が減ることもあることを理解した上で、購入契約するのです。また、消費者が農作業ボランティアなどにも参加する機会を設け、積極的に経営を支援する場合もあります。

CSAは、1980年代後半ごろにアメリカ北東部の農場で始まったのが起源と言われています。その後、グローバル化の進行により小規模農家の経営が困難になり始めたことを背景に欧米中心に定着し、世界的にも注目を集めるようになりました。

 

CSAのメリット

農家にとっては、収量減や卸売価格の変動によって、収入が不安定になるリスクを減らせることがCSAの最大のメリットです。不作などのリスクを織り込んだ前払いのしくみによって、農家は定収を確保できます。

また、あらかじめ契約してもらえるので計画生産がしやすくなることも大きなメリットでしょう。種苗や肥料、そのほかの農業資材を計画的に購入でき、より品質の高い作物の生産をめざせます。

消費者にとっては、地域の「顔の見える農家」から新鮮で安心感のある食材を手に入れられるメリットがあります。

また、農作業体験などを通じて生産者である農家と消費者の交流が促され、地域コミュニティーの活性化や子どもの食育などにつながることも期待できます。

CSAの運営形態

CSAは、農家が単独で立ち上げるだけでなく、様々な形態で運営されています。

後述する「鳴子の米プロジェクト」では、農家だけではなく地元の企業関係者などが参画する地域ぐるみの運営団体を設立しています。

神奈川県大和市の「なないろ畑」では、地域住民の農作業支援がCSAの契機となりました。食の安全への意識が高い地域住民が自主的に地域の農家の収穫作業を手伝い、野菜を持ち帰るようになったことから、自然発生的にCSAのしくみが生まれたのです。

地域のネットワークを活用することでより地域とのつながりが生まれやすく農家単独では難しいCSAの立ち上げをスムーズにするといえるでしょう。

 

CSAが日本で定着していない理由とは??

日本国内でCSAを実践している農家は、まだ多くはありません。

その理由としては、農家の前払い制度に対する心理的なハードルと、集客方法への不安が挙げられます。

農研機構 農村工学研究部(旧・農研機構 農村工学研究所)が開催した過去のCSA勉強会では、参加した農家から「不作になるからといって、同じお金を先に頂くことには違和感がある」との声が聞かれました。

また、「消費者とのつながりを作る伝手がない」「消費者グループとのつながりがなければ農家がCSAを立ち上げるのは難しい」などの声も聞かれ、集客方法への不安も農家がCSAに踏み出せない一因となっています。

出典:農研機構 農村工学研究部(旧・農研機構 農村工学研究所)「CSA(地域支援型農業)導入の手引き(平成28年3月)」

 

海外のCSAの実態とは??

ヨーロッパやアメリカでCSAが普及している理由の一つに、CSAに関する支援組織の存在が挙げられます。

代表的な団体としては、アメリカ・ニューヨーク市の「Just Food」があります。CSAを導入した農家に対し技術支援や情報提供などを行う団体で、消費者向けにCSA農家や分配所を検索できるプラットフォームを提供し、農家と消費者の橋渡し役も担っています。

「Just Food」のホームページ

国内では、研究者とCSAを導入している農家が発起人となった「CSA研究会」が、CSAの普及を推進しています。

CSA研究の第一人者である三重大学名誉教授 波夛野豪さんを始めとした研究者グループと、CSAを導入している「なないろ畑農場」の代表代表 片柳義春さんが中心になり2014年に「CSA研究会」を立ち上げました。

CSA研究会のホームぺージ
なないろ畑農場のホームぺージ

報告会や勉強会で、実際にCSAを導入している農家による発表などを行い、ノウハウの共有やCSA導入の心理的ハードルを下げることなどに努めています。

こうしたCSA導入のメリットや実践例を伝える普及活動を通じて、各地域に支援組織が生まれていくことが期待されます。

CSAは不安定な農業収入を平準化し「持続可能な農業経営」を実現する大きな可能性が秘められていますので「会員を集められるか」などの不安要素はありますが成功事例を知りこれからの農業経営に活用してみてはいかがでしょうか。